ホーム > モザイクよもやま話1 > 5:小笠原
突然小笠原へ行く事になりました。とにかく荷物を背負い、港へ急ぎました。
チケット購入のため列に並び、高額な船賃にどうしようか、と財布の中身を数えてると、後ろの女性に「小笠原は、はじめてなの?」と話しかけられました。すこし顔を赤くしながら「えっ?」と返事をすると、「これ差し上げましょう。使いなさい」。それは割り引き乗船券でした。
その後、この方に父島で何度もお世話になり、生涯忘れられない存在の女性となりました。 港を出発し28時間後には、父島、目的の母島へ4時間の船旅。陸に下ると、さすがに足下がふらつきました。
翌日おにぎりを持ち、さっそく散策へ。まず、海を一面に見おろしたくて山へ登りました。道もなく手で大きな葉をわけながら進むと、不思議な感触に気がつきます。
足をとめて辺りをよく見回すと、眼前に大きな緑色のとかげ、足下には茶色のとかげが八方に散っていきます。ものすごい恐怖に襲われました。本当に小笠原は自然の島なのです。
島の反対側に行くと、珊瑚のテーブルに海藻と色鮮やかな熱帯魚。観光の季節でなく、たった一人で見る海は私を圧倒しました。波の音もなく静かで、私はいつまでも一人占めできる、自然の美しさに満足しました。
こうして母島の美しい風景は私の記憶にしっかり焼きつけられました。 思いきりからだをうねらせて泳ぐ子供達のデッサンを描きました。波の模様が幾何学模様になっていきます。頭の中からどんどん記憶の情報が手先へ伝わり、絵になりました。
ホーム > モザイクよもやま話1 > 5:小笠原