ホーム > モザイクよもやま話1 > 8:雲に負けずに
常に仕事に恵まれているとは限らず、まったく仕事がない事もあります。そんな日が幾日も続いたある日、一本の電話に微かな期待を寄せました。
東京都福祉局のコンペティションのお誘いでした。 参加を薦めてくださった設計事務所の方は、まったく存じあげない方でした。面識のない方がお声をかけてくださるなんて、とても光栄な事でしたが、私には信じられませんでした。
しかしチャンスです。なんとか仕事を得るため頑張らねばなりません。
今までの総ざらいで、焼き物、金属、ガラスを組み入れたいと思い、素材を自由に活用したデッサンを始めました。
昭島生活実習所は、障害をもって生まれてきた成人間近の特殊学級生のための、日常生活の訓練所です。「親を頼らず、自立を目的とする」と説明がありました。彼等の努力する姿を目にして、「私に何ができるだろうか」と、原画に気持ちを投じました。
夏休みが終わる頃、デザインも最後の仕上げにかかり、昭島に行きました。校庭で原画を広げて仕事をしていると、空を勢いかけていく雲の影が絵に映りました。見上げてみると自分の体も雲と同じ方向に動く錯覚を起こします。 大きな塊の雲に負けずにいる、自分の絵が、勇ましく見えてきました。
きっと実習生を応援できるだろう。 結果は一等でした。この時ほど、うれしかった事は、ありません。
制作は3ケ所で行いました。ガラスモザイクは当アトリエ、陶板は土岐市、パイプの曲げ加工は足立区の鉄工所、陶板の取り付けはベテランの左官職人さん……。多くの方々に助けられ、ついに完成しました。
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