ホーム > モザイクよもやま話4 > 35:ミラノは遠かった
好景気な時にイタリアの有名ブランドファションが日本にやって来る事になりました。某設計事務所のご依頼をいただき、即行動派の私はモザイク制作の資料集めにミラノへ飛びました。
とりもとりあえずお店に向かいましたが、ガラス越しには洋服が見あたりません。場所は確かなので思い切ってお店のドアを開けました。
まるで大理石の神殿に迷い込んでしまったかのような、壮麗な美少年の笑顔が見え、言いしれぬ甘い不思議な香りに心が乱されました。私は熱に浮かされたように足下がふらついてしまったのです。
訝しげにみえたのでしょうか、マヌカンは私に声をかけました。我に返った瞬間目に映ったのは、頭にからみつく蛇の顔。
眉間に苦痛を表す冷淡な表情は私を見え透くかのように、「あんたは歓迎できない! そんな肉体には無理! 黒い髪に会う服はここにはないわ!」と言っているよう。私は伝説のごとく石のように硬くなってしまったのです。
左手奥にはギリシャ神話の彫刻に掛けらた衣装が照明を受け、愛と知恵と戦いのローマを奏でておりました。
メドゥサはアテナの嫉妬をうけ怪物にされ、生贄のためペルセウスに殺されました。同じようにそのブティックのデザイナーも数年前凶悪な殺人奇に射殺されてしまいました。
メドゥサのモザイクを3個ぐらい制作したころで、設計の先生に「日本人には無理ですね。歌舞伎顔だといわれてます」と言われました。
会社のスタッフにミラノの風を伝えられず、苦戦を余技なくしてた私は、黙って頷くばかりでした。
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