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よもやま話38岐阜の祖母

田園風景

の母方の祖母は88才の誕生日を迎えず、静かにこの世を去りました。岐阜の揖斐川と小高い山に囲まれた小さな村南濃町で一生を終えました。小柄で、飾らず地味な人でした。

小学校2,3年生ぐらいの夏休みに母とはじめて里帰りしたときを思い出します。トイレはおもて、洗面所は小川、鶏小屋はとても臭い、馬小屋には大きな農耕馬が蛇がはいったとおおあばれ……。なにもかも嫌いでした。

虫にさされたところがかゆく不愉快ですねている私に「夜になったら、いいもの見せたるでえ〜」と畑仕事から戻った祖母の顔は汗でくしゃくしゃでした。

真っ暗な小川で「ほーれ」と私の手に乗せてくれたのが、ホタルでした。初めて見たホタルでした。「まわりを見てごらんよ」と言われびっくり、暗闇に舞う不思議な色を放つ光に最初は戸惑いましたが、すっかりとりこになり、おばあさまの歌声に合わせ思い切り従姉妹達とはしゃぎました。

この時のおばあさまのやさしい、さわやかな笑顔が、暗闇にちらっと見えました。きれいな人なんだと気がついたのです。 

大学生時代、信楽の合宿の帰りに元気のない祖母の様子を見に寄りました。87才になるおばあさまは、驚くほど小さくなってました。一緒にお風呂に入ることになり、おばあさまの身体を洗ってますと、骨と皮だけの両肩に大きなしこりをみつけました。たずねますると「ショイダコ」。

そういえば毎日大きなかごを背負い働いていたおばあさまを思い出しました。泡の手ぬぐいでなでてましたら、涙をいっぱい流している顔が目の前にあります。私はニッコと笑いかけるとと祖母が微笑みました。

「この人すごい人だ!!」と思いました。人の人生をこの時ほど甘く見てはいけないと心に残したことはありません。

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