ホーム > モザイクよもやま話4 > 39:人生のチケット
真夜中の冬、子供をおんぶしてペンキで絵を描くのはかわいそう。シンナーも吸うし、おしめの交換は、零下の外。2,3時間はおとなしくしてますが、たいくつでいらいらするのか、悪さをはじめます。1才にもなると自我が生じ、おとなしくしてくれません、私も仕事に没頭できません。
そろそろ保育園に預けようと渋谷区役所の窓口に申し込み用紙をいただきにいきましたが、「子供預けて、何をするつもりだ〜!」と突然怒鳴られ、お説教されました。
「母親は家で子供を育てるのが、常識でしょう。え〜」
「絵を描く仕事!?」
「働かないとお金がない〜?」
「好きなことしているやつのための福祉でな〜い!! だめだ」
こんな扱いされるとは信じられず、怒りより情けなさで泪も出ませんでした。
しかしこんなことでへたばっては、私と息子は飢え死にです。なんとしても4月には入園させねばなりません。なんどもなんども怒られているうちに福祉課の中が見えてきました。ある日うるさいおじさんが居ないのをみはからって奥の机に座る若い方に頭を下げにいき、頼みこみました。
「今の現状は入園希望者50人に1人の園児しか選べません。あなたは無理でしょう。病気で育てられない親が優先です」
重い返答が身の奥まで伝わり、沈黙している私にそっと申し込み用紙を渡してくださいました。申し込み用紙の他に、今の生活の事情、子育ての責任、私の仕事への夢を文章で書きとめ提出させていただきました。
半ば諦めていた頃届いた区役所の封筒を開けてみますと、それは保育園への入園許可書。私にとって人生のチケットでした。
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