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今回は日本モザイク代表の住野久美子さんにご登場願った。多才な人間関係と多才なインスピレーションを駆使して大きな仕事を数多く手がけてきた住野さん。女社長でありながら、ファンクラブまであるというチャーミングな一面も合わせ持つ住野さんの魅力に迫る!
日本モザイクの代表取締役でもあり、東京・恵比寿の「デジタルコンビニエンス モザイコ」なるショップの社長でもある住野さん。住野さんが持つ女社長の貫禄と、姉御肌の雰囲気は、まさにキップのいい江戸っ子という感じだ。
住野さんは東京・品川生まれ。子供の頃から絵が好きで、絵描きになると心に決めていたのはずいぶん幼い時分からだという。高校生の頃から美大受験に向けて予備校へせっせと通い、親の反対もどこ吹く風で我が道を邁進。そしてしっかり美大に入学し、アルバイト先の近代モザイクでタイルと、その道の先輩達に出会い、住野さんの現在の仕事はどんどんまわりだした。
日本モザイクの前社長は住野さんの御主人。その御主人との間には息子さんもいる。住野さんは社長である上に母でもあるのだ。
昔、まだ赤ちゃんだった息子さんを背負って、パチンコ屋のシャッターに絵を描いていた住野さん。そんな懸命な姿に、クラブのオーナーらしき人からお声がかかる。
「大変だなあ、うちの店やってみるか? って声かけられて。それでバーとかディスコとかの装飾をやるようになったの(笑)」
とにかくこの子を食べさせなくっちゃ! 母の一念でものすごい仕事量をこなすようになっていった住野さん。ガラスモザイクの仕事はもちろん、もともと土が好きだったという住野さんは、陶芸を活かした物件を多く手掛けた。クライアントは超有名ホテルのロビーやこれまた超有名テーマパークなど、誰もが知っているような場所から小学校などの公共施設など、枚挙に暇がない。
そして、陶芸やモザイクにとどまらず、鉄やステンレスなどのパイプを使った造形もこなす。
「誰にも教わらないの。みんな自分でやるのよ。あたしはね、できないことないの!」
そんな大胆不敵な発言も、住野さんの口から聞くと、何の抵抗もなく、なぜか合点がいってしまう。そうだ、住野さんにできないことなんてないんだな、と。そう思わせる頼もしさが漂っているのだ。
その不思議な魅力が住野さんのもとへたくさんの人を引き寄せるのか、様々なスキルを持った人たちが住野さんのまわりに集まっている。
「でもみんな、次は何? ってこわがっているかもしれない(笑)」
一人でやろうとする小さな事しかできないけれど、たくさんの人でやれば大きな仕事がこなせる、と語る住野さん。そして住野さんが一番好きなのは無釉のやきものだという。大地の土の色、そして触れているとあたたまるその手触り。
それはまさに、強くて優しい住野さんの人柄そのものなのだ。
かつて渋谷にあったディスコの店内。材料は貝殻・ガラス・タイル・石によるモザイクとFRP彫刻によるもの。バロック的なデザインと、赤・白・紺・グレー・グリーンの抑えた配色とが絶妙のバランスを保つ。
ホテルオークラ東京の陶壁。原画は棟方志功。やきものらしい茶色が、ゆったりとしたロビーにぴったりだ。
ご友人との共同制作で完成したオリジナルタイル。上絵釉作りから絵付け、焼成までこなす。薄桃色の花に、薄黄色の蝶々がうつくしい。
2001年10月号「タイルアート作家の肖像(10)」記事より
記事掲載の許可を黒潮社様から頂きました。ありがとうございました。
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